偽装妊娠をする主人公。
そしてそれが徐々に現実になっていく様子が描かれている。
⚠️ネタバレあります。
主人公は、自分以外の全員が男性の職場で、コーヒー出しや片付け、掃除などの名前のない業務をひとりでこなす。中には、セクハラをする上司もいた。
そんなとき、主人公は言った。
「今妊娠していて。コーヒーのにおい、すごくつわりにくるんです。タバコの煙もダメだし。あとこのビルって全館禁煙ですよね。」こうして私は妊娠した。
妊娠していないのに、妊娠したことにしてからはじまる物語。
月日が経つにつれ、お腹を大きくするために詰め物を入れたり、生理を隠すために奮闘したり、マタニティビクスに入会したり、、
妊婦さんとしての葛藤している姿が、徐々にマタニティライフや嘘を楽しんでいるようにも見えてくる。
そして突如、妊娠していないのに赤ちゃんがお腹の中で動く。
エコーにも赤ちゃんの姿が映る。
なぜ?
想像妊娠?をして出産までした主人公。
最後までモヤモヤが残る構成と不思議な世界観に引き込まれる、 、
職場の環境を変えるために妊娠した主人公の判断と、その後の行動力がすごい。
「ねえ細野さん、自分だけの場所を、嘘でもいいからも持っておくの。人が一人入れるくらいのちょっとした大きさの嘘でいいから。その嘘を胸の中に持って唱え続けていられたら、案外別のどこかに連れ出してくれるかもしれないよ。その間に自分も世界も少しくらい変わっているかもしれないし」
主人公が放ったセリフだったが、こういう感覚をもっているから、思い切った行動ができるんだと感じたし、こういう感覚は少し見習いたいとも思った笑
終始、妊娠している様子以外にも、妊娠・育児の苦労や葛藤、いつもと違う電車やスーパーの様子を表現する描写が、なんとも秀逸で前半で心が掴まれた。
ぜひ、今おかれている環境や世代男女問わず、いろんなひとに読んで欲しい本だと感じた。
コメント